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飲食店で使える保険とは リスクに適応したそれぞれの保険を解説

シェアダイン編集部
作成日:2022/03/28
更新日:2023/01/23

目次

 念願の飲食店を無事にオープンすることができ、毎日のように通ってくれる常連客も増え、地域から愛されるお店へと順調に成長できたとしても、近年にみられるような新型ウイルスの台頭や、今後起きるとされている首都直下型地震のような自然災害など、店舗の力のみではどうにもならないような不可抗力の事象によって、お店が存続の危機に立たされる可能性は常にあります。
また、お客様を相手にする飲食店である以上、食中毒のリスクや接客などの業務におけるトラブルの可能性などとも、常に隣り合わせになるのが飲食業界です。

この記事では、飲食店における各リスクとそれに関連する保険、その保険を見直すタイミングについて、それぞれ解説させていただきます。

もしも、店舗がなんらかのトラブルに巻き込まれてしまった場合、店舗と自分の家族の身だけではなく従業員の生活を守るためにも、その対応や補償について知識を得ておくことは必須であるといえます。

この記事を通すことで、飲食店に起こりえるリスクの把握、また、それに対しての対策を知ることで、万が一の際にも落ち着いて対応できるよう備えておきましょう。

飲食店におけるリスクと関連する保険

飲食店を経営することは常にトラブルやリスクとの隣り合わせです。
大きく分けると、地震や台風のような自然災害による損害のリスク、近年流行中に新型ウイルスや食中毒の発生などによる休業のリスク、対お客様との間に起こるようなトラブルにおける賠償のリスクに分かれます。

そのため、万が一の有事の際にはスムーズに対応し、店舗や自身の身に家族、従業員の生活をも守ることができるよう、補償や保険に対する知識の引き出しを増やしておくことは飲食店を経営するにあたって欠かせない点になってきます。いくつか例を出して紹介させていただきます。 

地震災害などのトラブル

まず、地震や台風などの自然災害や、それにともなう火災や水災などのトラブルについては、人の手によって未然に防ぐことが出来るものではないため、これらのような損害のリスクに対する飲食店の対応法としては日頃から保険に入って備えておくことが必須です。

 自然災害に備える保険の種類としては主に、一般的な普通火災保険と飲食店などの店舗向けになる店舗総合保険の2つに分かれます。
 
 普通火災保険で補償される内容としては、建物からのもらい火や放火、落雷やガス漏れによる火災、台風や雪による風災になるのに対し、店舗総合保険はそれらの保証に加えて台風や大雨による洪水などの水災、車の衝突などによる外部からの損害、盗難による損害や集団による破壊・迷惑行為まで、より幅広い範囲が補償の対象になります。
 補償範囲が狭くなる分、普通火災保険の方が値段は安くなりますが、店舗総合保険の補償の広さは魅力です。所在地や所有面積などによって費用は変動しますので、店舗にとって起こりえるリスクはどれかを考えたうえで検討することが必要となってきます。
 

食中毒などの食べ物のトラブル

 
 食べ物や飲み物を提供する飲食店にとって、切っても切り離せないリスクとなるのが、食中毒や異物混入によるケガなど、提供した商品による食品トラブルです。

 いざというとき、これらの問題に対応してくれる保険をPⅬ保険(生産物賠償責任保険)といいます。

 PⅬ保険は問題が起きた相手への賠償金やその裁判・弁護士費用などの一部を保障してくれる保険になりますが、全額を負担してくれるわけではありません。
 
 賠償金、治療費とは別に見舞金が必要となる場合、この見舞金はPⅬ保険の基本的な補償には入っていないことが多く、追加オプションという形になる場合もあります。

 また、飲食店にて食中毒を出してしまった場合、一定期間の営業停止に加え、その事実を公表されることになります。そのため、休業中の収入が0になることに加え、再開後の売り上げは低下することがが見込まれることとなってしまいます。
 
 その場合にもPⅬ保険では追加のオプションの形にはなりますが、営業継続保険金といった形で当面の店舗を持続するための資金補償、再開にあたっての臨時費用を保障してくれる営業再開臨時費用保険金といったものも存在します。

 もちろん問題を起こさないことが一番ですが、万が一に備えて保険に入っておくことに加え、資金は常に蓄えておくことも必要になります。

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業務トラブルにおける賠償責任

 
 日々お店を営業していくにあたって、不測の事態によりお客様への賠償責任が発生してしまう場合があります。
 床や看板などの、お店の建物の老朽化が原因となることによりお客様に怪我をさせてしまった場合や、店舗の従業員がお客様へ熱い料理や飲み物をかけてしまった場合などです。

 これに対応してくれる保険を、施設賠償責任保険といいます。

施設賠償責任保険はテナントのオーナーや管理者が加入できる保険のひとつで、業務中に起きた問題によりお客様や通行人、近隣の方々が被害を被り、店舗に賠償責任が生じてしまった際に、その金額の一部を補償してもらえる保険です。

適応されるパターンとしては、従業員が運んだコーヒーをお客様にかけてしまい火傷をさせてしまった、洋服を汚してしまいクリーニング代を請求されてしまった、店舗の老朽化により配管が破裂した、表の看板が落下し、通った車にぶつかってしまった、など、お客様へのサービスの途中で起きてしまったトラブルや、建物や設備が原因となるものが当てはまります。

 不測の事態で起こることが多いため、防ぎにくい問題であるため、日頃から保険に入って備えておくことは大切なことであると言えます。

また、従業員の業務によるお客様とのトラブルには教育の徹底を、建物の老朽化が原因となるものは早急な修理を。食中毒と同じように、万が一、賠償責任問題が起きてしまった時には、今後の再発の防止を心がけることも必要です。

やむをえない理由による休業補償


 勤務中の怪我や突然の設備故障、近年では新型コロナウイルスでの営業自粛要請など、飲食店は想定外の事態によって休業せざるを得ない場合もあります。

飲食店はお店を開け、お客様が来店してはじめて利益につながるため、お店そのものをオープンすることが出来ないと収入が0になってしまいます。不測の事態から自分たちの生活を守る意味でも、休業に関する補償について紹介させていただきます。

・労働中の怪我
労働中の怪我により就業が難しくなり、月々の収入がなくなる場合は補償の対象になることが多くなります。
所得補償保険といわれるもので、お給料のように月々一定の額を補償してもらえる保険です。

月々の掛け金を多くするほど、補償される金額も多くなる場合が多いものですが、店の通常時の売り上げを参考にして額が決まることもあるので、加入する場合は収入と補償のバランスを考えて検討することが必要となります。

・火事や落雷、台風による風災や水災など
隣の建物で発生した火事からのもらい火や、落雷による火災、台風による風災や水災などに代表されるような自然災害など、予想することが出来ないアクシデントが原因で営業が出来なくなる場合は店舗の休業保険が適用される場合があります。

 また、店舗側に重大なミスがある場合は補償の対象から外れてしまうこともあります。
冷蔵庫のコンセントが抜けていて食材が出せなくなってしまった場合や、食材が悪くなっていると知りながら提供し食中毒が起きてしまった場合などは補償の対象から外れることが多く、あくまでアクシデントによる休業により収入が減った店舗が対象となるので、個人的な理由や故意に店舗を締めての休業では補償の対象になりません。
予想のつかないトラブルから一時的に生活を守り、損害を最小限に抑えることが目的の保険となります。
 

保険を見直すタイミングとは


 近年にみられるような新型ウイルスの拡大や、いずれ来ると言われている首都直下型の大地震、建物の老朽化やゲリラ豪雨による水害など、飲食店は日々営業していくだけでも様々なリスクにさらされています。

オープン時に加入した保険のままではなく、お店の経営状態や世間の流れなどから定期的に保険を見直し、適正なものに更新していくことが必要です。

 保険を見直す際のタイミングをいくつかご紹介させていただきます。

・新店舗のオープン
店舗ごとで土地や環境は違ってくるため、手厚く補償してもらう箇所も変わってきます。
新店舗をオープンする際には、あくまで他店は参考程度に、よく検討することが必要です。

・店舗の改装、休業明け
店舗の内装や設備を改装したり、その工事によりしばらく休業したりする際には加入している保険を見直す良い機会です。
値段は妥当か、不必要なものはないか、必要な箇所には満足な補償がされるような保険にちゃんと加入できているか、心機一転、確かめてから再オープンを迎えましょう。

・従業員の増加、入れ替え
従業員が増えることは喜ばしいことですが、人数が増えれば増える分、情報の共有は難しくなります。
加入している保険の内容や補償される個所などは、従業員に変動があった際に確認するようにしておく方が無難であると言えます。

・保険の更新時、年度の切り替え
加入している保険の更新時や新たな年度を迎える際は、現状が最も店舗に適している形なのかどうかを改めて考える良い機会です。
店舗の休業明けと同じように、今一度初心にもどって一つずつ確認することで、余計な出費を省くことが出来たり、より安心な補償内容の保険に加入することができたりと、店舗をより良い状態に持っていくことが出来ます。

定期的にお店の加入している保険内容を確認をしておくことで、万が一トラブルが起こってしまった際のリスクを減らせる可能性が高まります。
確認をした結果、現状維持が一番、ということであれば日々の営業にも安心して取り組めますし、その気持ちになって損をすることはありません。
自身の店舗と養う家族、働く従業員の生活を守る意味でも、お店の状態は常に把握しておきましょう。

まとめ


飲食店が営業するには常にリスクが伴うことになり、そのリスクとは、

  • 地震や台風などによる損害のリスク
  • 食中毒などのアクシデントによる休業のリスク
  • 授業員とお客様間でのトラブルによる賠償のリスク     


の3つに分かれます。

これらは飲食店を経営していく上で避けては通れないものであり、自身の注意のみで確実に回避できる方法は存在せず、いつ起こるものかも予想がつきにくいため、万が一のトラブルの際には自分と従業員の生活を守るためにも、店舗は日頃から保険に加入しておくことが必要となってきます。

地震や台風などの自然災害に備えるには、一般的な火災保険の対象範囲からより広い範囲が補償対象となる、店舗総合保険

食中毒を起こしてしまったことによる休業や、その問題による裁判、弁護士費用の一部を補償してくれるのはPⅬ保険(生産物賠償責任保険)

業務中に起きたトラブルによりお客様や近隣の方々に賠償責任が生じてしまった際、その金額の一部を補償してくれるのは施設賠償責任保険。

それぞれの保険は、月々支払う金額によって、補償内容の範囲と金額が変わってきます。
店舗によって起こりやすいトラブル、また、有事の際の補償内容の希望が店舗やオーナーによって変わってくるためです。

よって、経営状態や環境によって加入する保険を検討することが必要となってきますが、これらはオープンしてからずっと一定な条件ではありません。

店舗の休業、新装開店、従業員の増減、保険の更新など、節目節目に加入している保険とその補償内容を見直しておくことで、万が一トラブルが起きてしまった際のリスクを最低限まで減らすことが可能となります。

繰り返しになりますが、各トラブルをすべて確実に回避できるという方法は存在しません。
お店の状態と条件を考え、有事の際には店舗と自身を含めた従業員の生活を守ることが出来るよう、常に最適な保険に加入しておき、安心して働けることでより良いサービスをお客様に提供できるようになりましょう。

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