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飲食店の食中毒対策と食中毒が見つかった場合の対処法

シェアダイン編集部
作成日:2022/04/14
更新日:2023/01/10

目次


飲食店にとって、食中毒は絶対に起こしてはならないものですが、食中毒が起こる場所の6割が飲食店と言われています。もし食中毒を起こしてしまえば営業停止処分や、最悪の場合営業許可の取り消しといった重い処分が下ることもあります。
この記事では、飲食店の食中毒対策や万が一食中毒が発生してしまった場合の対処法をご紹介します。しっかりと読んで、食中毒対策を万全にしましょう。

飲食店で食中毒が発生しやすいタイミングとは

飲食店で食中毒が発生する原因として、「食中毒菌」と「ウイルス」が挙げられます。「食中毒菌」による食中毒は菌が食品に付着し、増殖することによって発生します。「ウイルス」の場合は、食品の中で増殖することはありませんが、一定数が付着することによって発生します。

飲食店で食中毒が発生するには、次の7つのタイミングがあると言われています。

1 原材料の受け入れ時

飲食店では毎日のように食材の受け入れがあるため、業者の出入りも毎日あります。しかも取り扱う食材の種類も多いため、複数の業者が出入りします。忙しい時は、全ての食材の納品に立ち会うことが難しいこともあるかもしれません。しかし、店内の衛生環境を徹底し食中毒を予防したとしても、食材に菌があれば食中毒が発生する原因となってしまいます。
また、納品に時間が掛かってしまうと食材が常温に置かれる時間も長くなり、その間に菌が増殖してしまう可能性も高まります。したがって、原材料の受け入れにはしっかりと立ち合い、できるだけ短時間で済ませましょう。その際、商品や数が注文の内容と納品されたものが間違えていないか、見た目やにおい、包装された状態や消費期限や保存方法などの表示もしっかりと確認しましょう。
万が一、何かしらの問題や異常が見られた時は、返品などの対応が必要です。受け入れ後は食材の状態や消費期限等をしっかりと確認し、速やかに冷蔵庫や冷凍庫に入れて保管するように心がけることが大切です。

2 冷蔵庫・冷凍庫の温度が不適切な場合

厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」によると、食中毒菌は20℃~50℃の温度帯で活発に増殖するため、食材を常温にさらしておくのは大変に危険です。
食材の温度管理は食中毒予防の三原則である菌を「増やさない」の部分の最重要項目です。各食材によって適した保存温度がありますので、単に冷蔵庫や冷凍庫に入れるだけではなく、必ず表示された温度に従って保存するようにしましょう。
冷蔵庫・冷凍庫は毎日時間を決めて、温度を記録し、万が一冷蔵庫や冷凍庫に異常が起きた場合にすぐ気付けるようにしましょう。

3 保管や調理の仕方が不適切な場合

食材の保管は、食中毒予防の三原則、菌を「つけない」「増やさない」「なくす」のすべてに関わります。特に、調理を行う際の場所・温度・時間に十分注意することが必要です。
・つけない
冷蔵庫の中の食材は種類ごとに場所を決めて保管し、特に生肉や生の魚介類はふた付きの容器の中に入れて、冷蔵庫の一番下の段に入れるようにしましょう。 
調理の際には、まな板や包丁などの調理器具は肉や魚など食材や用途別に分け、使い終わったらその都度よく洗い、消毒をしましょう。
また、冷蔵庫・冷凍庫内の保管状況や調理器具の使用状況や洗浄の状況を確認することが大切です。

4 器具の洗浄が不十分な場合

調理器具に汚れが残ったまま使用すると、残っていた菌やウイルスが他の食品に移ってしまいます。洗剤や薬剤もしっかりと保管や管理をしておかなければ、間違えて使用してしまう可能性があります。
器具に傷がついていた場合は、洗浄しても傷に汚れが残る場合があります。こまめに確認をし、傷が付いたら新しいものに買い替えるなどの対応をしましょう。同様に、洗浄器具もこまめに変えるように心がけましょう。

5 トイレが汚れている場合

トイレは、ノロウイルスなどの汚染源となります。ノロウイルスは感染者の糞便や嘔吐物に多く含まれているので、トイレ後の手洗いの不足により感染してしまうケースが多いです。
トイレ掃除では、特に手すりやドアノブなど手が触れる場所は入念に消毒しましょう。掃除をする際には、清掃用の作業着に着替えるなどして、食材に菌やウイルスがつかないように注意しましょう。

6 体調不良者が調理に従事した場合

体調不良者が触れたところは全てが汚染源となります。調理担当者が体調不良の場合、厨房には絶対に入らないようにしましょう。
手に傷がある場合も、調理作業に従事しないようにしましょう。毎日仕事に入る前に、発熱や下痢、嘔吐などの症状がないか、手に傷はないかなどの健康チェックをするなどの工夫が必要です。当然のことですが、清潔な身なりで調理に当たるようにしましょう。

7 手洗いが不十分だった場合

手洗い不足も食中毒の原因になります。食中毒菌やウイルスは元々食材に存在しているか、人の手を介して付着することが多いので、しっかりと手洗いをするだけで、食中毒の防止になります。
調理開始前、トイレに行った後、生肉を扱った後などは特に、手洗いを確実に行いましょう。また、手洗いの大切さや正しい手の洗い方などを定期的に研修するなどの取り組みも効果的です。

食中毒が発生した場合の対処法

もし食中毒が発生してしまった場合は、適切に対処をして、被害を最大限に防ぐことが大切です。
 ・お客さまから食中毒だと連絡が入った場合

①    事実関係の把握

まずは謝罪とお客様の体調を気遣う言葉を伝え、その後でお客様の話をよく聞き、事実関係を確認しましょう。正確に事実関係が把握できるように、メモを取るようにしましょう。

 ②    お客様に医療機関の受診を勧める

腹痛や下痢等の症状がある場合は、食べすぎなどお客様自身に原因がある可能性もあります。そのため医療機関の判断を仰ぐよう、受診を勧めるようにしましょう。

 ③    診断結果を待つ間、情報収集する

お客様が病院を受診後、結果が出るまでの間は当日同じメニューを食べた他のお客様から同じような連絡が入っていないか、仕入れ先の卸売業者に同様の連絡が入っていないか、従業員の中に体調不良者がいないかなどの情報収集をしましょう。
食材に食中毒の原因として疑われるものがある場合は、状態を確認し、保健所の検査に出せるように準備しておくことも必要です。

・受診結果が食中毒だった場合

食中毒との診断が出た場合は、原因が店で提供した料理なのか、それ以外なのかを特定する必要があります。
店の料理が原因となった場合は営業を休止し、保健所の立ち入り調査が入ります。その場合は、厨房内は清掃や消毒をせず、そのままの状態にしておく必要があります。
また、保健所からはレシピ、納品書、清掃チェックなど店内の各チェック表、衛生管理等のマニュアル類の提出が求められます。
店側の過失によるものだと判断された場合は、数日から1ヶ月以内に行政指導、行政処分が下されます。お客様の症状によっては、追加の治療費や慰謝料などの支払いが発生することもあります。

HACCPシートについて

令和3年6月1日より、厚生労働省より「HACCP(ハサップ)」に沿った衛生管理が制度化され、全ての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務付けられました。
「HACCP」とは、「Hazard(危害)」「Analysis(分析)」「Critical(重要)」「Control(管理)」「Point(点)」の5つの谷戸の頭文字に由来する衛生管理手法です。前半2つを合わせて「危害分析」、後半の3つで「重要管理点」という言葉にもなります。
これら2つは、安全な食品を提供する上で欠かせない観点です。これに基づいて、お店の衛生管理を徹底していきましょう。

関連記事:
飲食店でのHACCPとは 基礎的な意味とチェック項目の解説

まとめ

飲食店は食中毒が出やすい環境にありますが、絶対に出さないように努力することが非常に重要です。食中毒が発生した場合の対処法についてもふれましたが、まずは食中毒を起こさないようこの記事の内容を参考にして、衛生管理を徹底してください。

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