Hero Image

卸業者と仲卸業者の解説 食品卸売業で代表的な会社の紹介

シェアダイン編集部
作成日:2022/03/23
更新日:2023/01/26

目次

卸業者(おろしぎょうしゃ)とはメーカーから商品を仕入れて小売業者に販売する仲買業者のこと。インターネット直販が普及する中で存在意義を問う声も聞かれますが、卸業者は流通の効率化と適正な在庫管理を実現するうえで不可欠な存在です。

この記事では食品業界の卸業者に焦点を当てて、卸業の意味をはじめ仲卸業や小売業との違いについてくわしく解説するとともに、日本を代表する食品卸の企業5社を紹介します。

食品卸業とはなにか

食品卸業とは生産者から食品を仕入れて小売業者に卸す(おろす=販売する)取次業およびその従事者のこと。ちなみに「卸業」は基本的に生鮮食品を扱う仲買業者の呼び名で、生鮮食品以外の業者は「問屋(とんや)」といいます。

食品卸業者の役割は大きく分けて4つあります。ひとつは全国の生産者から商品を仕入れて小売業者に販売すること。小売業者の多くは事業規模が小さく、消費者の需要に応じた商品を全国の生産者から直接買い付けることができる流通経路を持ちません。

また生産者にとっても、卸業者に販売を委託できれば自力で商品の販売先を探したり売掛金を回収したりする手間が省けて生産に集中できるメリットがあります。

卸業者の2つめの役割は商材の仕入れコストを下げること。生産者は大量生産と大量販売によって利益を最大化を図ります。受注は最小でもケース単位か、100個などのロット単位が基本。小売店の需要に合わせて少量販売を行うと手間やコストが余分にかかります。

そこで卸売業が仲介して生産者から商品を安く大量に仕入れて小売店に小分けすれば、小売店は需要に合った適量の商材を安く仕入れることができます。

3つめの役割は流通在庫の確保。小売業の多くは店舗がせまく店頭在庫以外に在庫の保管スペースがありません。一方、卸業者は大量の商材を買い付けて専用の倉庫に保管します。小売店が品切れになっても卸業者に在庫があればすぐに取り寄せることができます。

最後に4つめの役割は生産者と小売業者の双方に有益な情報を提供すること。卸業者は全国を網羅する流通ネットワークを通じて収集したマーケティング情報を生産者と小売業者に提供することで、現代社会に求められる多品種少量高回転の売買に対応します。

仲卸業者とは?

「仲卸(なかおろし)業者」とは水産物や食肉などの生鮮食品や生花を売買する「卸売市場(おろしうりしじょう)」で卸を営む業者のこと。ちなみに卸売市場は市場(しじょう)ともいいますが、市場を「いちば」と読むと「大勢の人が売買する場所」の意味になります。

同じ「市場」でも「しじょう」と「いちば」とでは意味が違いますので注意が必要です。

「卸売市場」または「市場(しじょう)」では、生産者から委託を受けた卸売業者が商材を競りにかけて販売します。卸売市場で競りに参加できるのは売買参加権(買参権)を取得した買参人のみ。買参権のない小売業者は卸売市場で商品を買うことはできません。

そこで買参権を持つ仲卸業者が商材を市場(しじょう)で競り落として小売業者に販売します。卸売市場には「仲卸市場」と呼ばれる一角があり、さまざまな商材を専門とする仲卸業者が店を構えて各自が選んだ商品を小売業者が買いやすい量に小分け販売しています。

仲卸市場では卸売市場と違って競りは行いません。仲卸業者と顧客の小売業者が対面販売で価格を交渉して売買します。

小売との違い

「卸(おろし)」と「小売」は切っても切れない関係にありますが、それぞれの意味にどのような違いがあるのでしょうか。辞書で「小売」を調べると「生産者が製造する商品を不特定多数の最終消費者に直接販売する業態、もしくはその業者」などと説明されています。

簡単に言えば商品を小売業者に販売するのが「卸」。消費者に販売するのが「小売」です。英語由来のビジネス用語では「BtoB(Business to Business)」が「卸売」、「BtoC(Business to Customer)」が「小売」に該当します。

ちなみに「小売」という言葉は、個人消費者の需要に合わせて商品を「小分けして売る」ことに由来しています。「小さな店」の意味ではありません。英語で「小売」を意味する「retail」も「再び切る=切り売りする」という意味が由来です。

食品卸売業での代表的な会社

最後に食品卸業者の実例として日本を代表する大手食品商社5社を紹介いたします。

三菱食品株式会社

三菱食品株式会社は東京都文京区小石川に本社を置く東証一部(2022年4月からスタンダード市場)上場の食品総合商社です。創業は1925年。資本金106億3千万円。三菱商事の連結子会社で食品卸業界首位の売上高を誇ります。

主な取引先はAmazon.co.jp、イオン(ダイエー)、イトーヨーカドー、ローソンなど。冷凍食品や加工食品、酒類などの流通に強く、流通ネットワークは全国をカバー。卸売だけでなく小売店のプライベートブランドや新商品のプロデュースなども手がけています。

株式会社日本アクセス

株式会社日本アクセスは東京都品川区西品川に本社を置く非上場の総合商社です。1993年に設立され現在の資本金は26億2千万円。元雪印乳業のグループ企業「雪印アクセス」が伊藤忠商事の傘下に移り、その後のグループ再編で業界第2位の地位を確立しました。

株式会社日本アクセスの取引先は元親会社の雪印メグミルクがメイン。事業内容は食品、水産物、農産物、畜産物、花卉等の販売・輸出入・買付・加工・商品企画・開発など多岐にわたります。

国分グループ本社株式会社

国分グループ本社株式会社は東京都中央区に本社を置く非上場の食品専門商社です。創業は1712年。醤油醸造工場として「大國屋」の屋号で開業しました。現在は食品総合商社として三菱食品株式会社と株式会社日本アクセスに次ぐ第3位の売上高を誇ります。

国分グループ本社株式会社の資本金は35億円。食品卸売業として全国の生産者の商品を扱うと同時に「K&K」など自社ブランド商品の開発販売も手がけています。

加藤産業株式会社

加藤産業株式会社は兵庫県西宮市に本社を置く東証一部(2022年4月からプライム市場)上場の総合食品商社です。創立は1947年。全国4,000社を超えるメーカーから商品を仕入れて小売業に販売するほか、オリジナル商品の製造販売も手がけています。

また卸業者として社会のトレンドやニーズを迅速的確に把握して生産者と小売業者双方の現状と課題を分析。新たな付加価値の創造につながるサポートを提案します。

伊藤忠食品株式会社

伊藤忠食品株式会社は大阪府大阪市中央区に本社を置く東証一部(2022年4月からプライム市場)上場の総合食品商社です。資本金は4,923,464,500円。明治19年に創立された伊藤忠グループで最も長い歴史のある会社です。

伊藤忠食品は酒類・食品卸売業として全国約4,000社のメーカーと、セブンイレブン・イトーヨーカドーなど約1,000社の小売業を仲介。約50万ものアイテムを扱い業界第5位の売上高を誇ります。

まとめ

卸業者は生産者と小売業者とを仲介して双方の取引業務の負担軽減と流通の効率化を両立しています。また商材を大量に売りたい生産者と少量の仕入れを望む小売業とのニーズのギャップを調整したり供給在庫を確保したりする重要な役割を担っています。

関連記事:
飲食店の値入率とは 計算方法と原価率との違いを解説
FLコストとはなにか 適切な人件費・食材費の解説
飲食店経営時に関わる消費税の解説 仕入れ時の消費税や軽減税率とは
飲食店の利益率とは 利益率の計算と粗利率を高めるためのチェックポイント

この記事をシェアする