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管理栄養士と栄養士の違いとその勤務先の解説 管理栄養士の配置が義務付けされている施設とは

シェアダイン編集部
作成日:2022/03/21
更新日:2023/01/26

目次

管理栄養士と栄養士。どちらも栄養に関する国家資格ですが、具体的にどのような違いがあるのか疑問に思う方も多いかと思います。この記事では管理栄養士と栄養士それぞれの仕事内容と資格取得条件、資格取得後の勤務先についてくわしく解説いたします。

管理栄養士とは

管理栄養士とは栄養に関する高い専門知識と技能を持ち、子供や傷病者、高齢者など1人ひとりの成長や療養、健康の保持増進に必要な栄養の指導と食生活の管理に「管理栄養士」として従事することができる人およびその資格をいいます。

仕事内容

栄養士法第一条に記載された管理栄養士の業務を要約すると以下の3項目になります。

  1. 傷病者の療養に必要な栄養の指導。
  2. 個人の体の状況や栄養状態に応じた栄養の指導。
  3. 特定多数に継続して食事を供給する施設において利用者の体の状況や栄養状態に応じた給食管理と、栄養の改善に必要な施設に対する指導。


1の「傷病者」とは医療機関で療養する患者のこと。患者はその症状によって食事が制限されたり、特定の栄養を摂取できなかったりする場合があります。管理栄養士は個々の患者に最適な栄養バランスと食生活の改善について指導する「栄養管理」を行います。

2は管理栄養士が対象者1人ひとりの健康や栄養状態に合わせて栄養の指導を行うという意味です。一般の栄養士は健康な人を対象に基本的な栄養指導を行うだけで、赤ちゃんや傷病者、高齢者など食事や栄養に配慮を要する人に対する個別指導はできません。

次に3の「特定多数に継続して食事を供給する施設」とは学校や企業、病院や福祉施設などに給食を提供する施設のこと。栄養士はさまざまな給食施設で栄養バランスを考慮した献立作りや調理方法の指導をはじめ、衛生管理や労務管理、給食管理などを担当します。

一般の栄養士は献立作成や栄養指導はできますが、給食管理などの管理業務に携わることはできません。そこで特別な栄養管理が必要な給食施設では管理栄養士の配置が義務づけられています。

栄養士法に明記されていない仕事では、企業の特定保健指導があげられます。特定保健指導とは公的医療保険の加入者を対象とする保健制度のひとつ。企業では健康保険組合が従業員に生活習慣の改善や栄養のアドバイスといった保健指導を行います。

近年では従業員の健康支援を重要視して「ホワイト500(健康経営優良法人)」の認定をめざす企業も多く、健保組合に管理栄養士を配置して従業員1人ひとりに食生活や栄養の指導を実施する企業も増えています。

管理栄養士は栄養士の上級資格ですから、栄養の専門知識と技能によって人々が健康に生活できるように栄養の指導を行うという業務の基本は栄養士と同じです。違いはより高度な管理業務に従事できること。管理栄養士は文字通り「管理職の栄養士」といえるでしょう。

資格取得条件

管理栄養士の資格を取得するには管理栄養士国家試験に合格しなければなりません。試験は年に1度。2月下旬から3月初旬にかけての日曜日に実施されます。合格者は試験の約1ヶ月後に厚生労働省のウェブサイトに公示されます。

管理栄養士国家試験の受験条件は、栄養士の資格取得者で栄養士養成施設の修業年限と、厚生労働省令で定める施設において栄養指導に従事した年数との合計が4年以上になること。たとえば短期大学で栄養士資格を得た人は卒業後2年以上の実務経験が必要です。

一方、4年制大学の管理栄養学科に進学した人は卒業年に栄養士免許を交付されると同時に管理栄養士の受験資格を取得できます。前述のように管理栄養士国家試験は2月下旬から3月初旬に実施されるため、それに合格すれば新卒で管理栄養士の資格を取得できます。

資格取得後の勤務先

全国栄養士養成施設協会の調査結果によると、管理栄養士の勤務先は病院や介護保険施設、社会福祉施設、児童福祉施設など医療・介護・福祉関係の法人団体のほか、食品の製造加工や販売を行う企業や、学校や病院などに給食を供給する施設などがあります。

食品関係以外の企業では健康保険組合の加入事業所で従業員の栄養指導や健康管理を担当することも。また栄養教諭の資格を得て小中学校に勤務する人や、少数ながら大学院などの上級学部に進学して研究職に就く人もいます。

栄養士とは

栄養士とは栄養に関する高い知識と技術を持ち、食生活の改善など栄養の指導に「栄養士」として従事できる人およびその資格をいいます。

仕事内容

栄養士法では、栄養士の職務について「栄養士の名称を用いて栄養の指導に従事すること」と定義しています。管理栄養士と違って具体的な業務内容は明示されていません。逆に言えば、栄養司法に定義された管理栄養士の業務を除く「栄養の指導」が栄養士の仕事です。

具体的には病院や介護施設、保育園、学校、企業などに給食を供給する施設で栄養バランスを考慮した献立を開発したり栄養や調理の指導をしたりするほか自ら調理場に立つことも。企業では従業員の健康管理や社食の献立作成、食品関係の商品開発などに従事します。

栄養士の仕事は管理栄養士よりも現場での実務が多く、給食や社食の献立作成では栄養士自ら調理場に立つことも。一方、病院の傷病者や介護施設の高齢者など食生活に制限がある人に個別の栄養指導はできません。

栄養士の仕事は健康な人々を対象にした基本的な栄養指導がメイン。個別の栄養指導は管理栄養士の職務領域です。一方で、近年では栄養管理の国際基準として「栄養管理プロセス」という新たな概念の導入が進んでいます。

これは対象者の栄養状態を個別に判定して栄養管理を行うプロセスを標準化するもの。これから栄養士に求められる知識とスキルに栄養管理プロセスが加われば、管理栄養士の業務に一歩近づくことも予想されます。

資格取得条件

栄養士の資格を取得するには厚生労働大臣指定の養成施設で栄養士に必要な知識と技能を2年以上修得する必要があります。具体的には短期大学や専門学校の栄養学科か4年制大学の管理栄養学科などで所定の科目を履修すると、卒業時に栄養士の資格を取得できます。

栄養士の資格試験はありません。前述の養成施設を卒業した後、居住地の保健所に所定の申請書類を提出すれば、都道府県知事から栄養士免許が交付されます。そのため栄養士は国家資格ではないと誤解されることもありますが、栄養士も管理栄養士と同様に国家資格です。

資格取得後の勤務先

全国栄養士養成施設協会の調査では、栄養士の資格取得後の勤務先は、管理栄養士と同様に病院や給食会社、介護施設や児童福祉施設、保健所など栄養関連の行政機関、健康保険組合を含む一般企業がメインです。

管理栄養士と比較すると企業に勤務する栄養士は少ない一方、学校や児童福祉施設、介護施設に勤務する者が多い傾向にあります。近年ではコロナ禍の影響を受けて健康への意識が高まり、栄養士が活躍できる業界や職種は増加の一途をたどっています。

まとめ

栄養士とは栄養に関する高い知識と技術を生かして栄養の指導に従事できる資格をいいます。管理栄養士は栄養士の上級資格で、栄養士にはできない管理業務に従事することが可能です。

管理栄養士には国家試験がありますが、栄養士は養成機関を卒業すると免許が取得できます。栄養士と管理栄養士の勤務先は病院や給食会社をはじめ介護施設や児童福祉施設、保健所などの行政機関や、健康保険組合を含む一般企業が中心です。

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