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飲食店での人材派遣はあり?メリット・デメリットの解説

シェアダイン編集部
作成日:2022/04/15
更新日:2023/08/04

目次

飲食業界は人手不足が深刻な業界のひとつ。閑散期と繁忙期によって労働力の需要が変わるため正社員の雇用がむずかしく、現場スタッフはアルバイトやパートの比重が7割を超えるといわれています。また多忙で立ち仕事が続くため早期離職が多いのも特徴です。

人材の定着率が低いと新人を採用するたびに一から仕事を教えなければならない、という問題も。そこで注目したいのが人材派遣システムです。この記事では飲食店が人材派遣を利用するメリットとデメリットを中心にくわしく解説いたします。

飲食店への人材派遣とは

人材派遣とは、派遣会社が自社に登録したスタッフを、他の企業や事業所へ有期雇用の労働者として派遣すること。派遣されたスタッフは派遣先の企業や事業所の指揮命令のもとで職務に従事します。ただし雇用契約は派遣先ではなく派遣会社と締結するのが基本です。

派遣会社の登録スタッフは無期雇用派遣と登録派遣に大別できます。無期雇用派遣とは、その名の通り派遣会社との雇用契約を期間を定めずに締結すること。派遣社員の給与は派遣会社が支払うため無期雇用では派遣先が決まらなくても給料を受け取ることができます。

一方、登録派遣は派遣先が決まるまで雇用契約を締結せず、人材登録だけで待機する派遣形態です。飲食店業の場合、人員のニーズが時期や時間で変動するため登録派遣のスタッフを短期で雇用するケースがほとんどです。

派遣スタッフの業務はホールサービスやレジ係などの接客スタッフと、調理補助や洗い場などのキッチンスタッフがメイン。ほかにもケータリングサービスやビラ配りといった販売促進など派遣先のニーズに合わせてさまざまな業務に対応可能な人材を登録しています。

人材派遣を利用するメリット

人材派遣は飲食店が求める労働力を効率よく確保できる新たな雇用形態です。ここでは人材派遣を利用する具体的なメリットについて、従来の雇用形態と比較しながら解説致します。

期間を指定しやすい

多くの飲食店は夜間や週末、祝祭日などが稼ぎ時。一般企業に比べて休日が少なく、勤務も長時間に及ぶため人材の安定確保が難しいとされています。一方で閑散期には人手が余るケースも。従来の雇用形態で労働力を効率的に確保するのは簡単ではありません。

人材派遣会社は飲食店のニーズにあった経験豊富な派遣スタッフを数多く登録しています。飲食店が希望する派遣スタッフの契約期間を指定することで繁忙期にスタッフを増員して閑散期には削減するといった柔軟な運用が可能です。

派遣会社によっては最短1日で人員を手配できる会社も。繁忙期だけでなく従業員の急な退職や長期の欠勤によって一時的な人材不足に陥った場合でも即戦力の人材を迅速に確保できます。

採用コストがかからない

一般的な採用手法では求人広告の掲載料などの採用コストがかかります。人材派遣では、人材募集や社員教育は派遣会社が行うため採用コストがかかりません。必要なコストは派遣スタッフが使用する備品の購入費などの準備費程度に限られます。

専門性のある人材の確保

一般的な採用手法で即戦力の人材を必要な時に必要な数だけ確保するのは容易ではありません。それに対して飲食店専門の派遣会社はホールスタッフやキッチンスタッフ、あるいはその両方に対応できる有能な実務経験者や専門性の高い資格保持者を登録しています。

また店舗を移転したり新規で開業したりする場合は、通常の業務に加えてチラシ配りやキャンペーンなどの集客業務や新規の開店準備といった業務が一時的に発生します。そうした場合でも人材派遣を活用すれば柔軟に対応できる点もメリットです。

ちなみに飲食店は法律によって食品衛生責任者の配置が義務づけられています。資格があれば派遣スタッフを食品衛生責任者として配置することも可能ですが、契約期間満了で退職してしまうと食品衛生責任者が不在になって行政処分を受ける可能性があります。

食品衛生責任者は自治体で開催される食品衛生責任者養成講習会を受けた後で窓口に申請すれば一日で取得できる資格です。できれば事業者自身が取得したほうが良いでしょう。

人材派遣を利用するデメリット

飲食店が人材派遣を利用する場合、以下に示すデメリットがあります。

時間・期間に制限

飲食店が派遣スタッフを雇用する場合は派遣会社と労働者派遣契約を締結します。契約内容は派遣期間と就業日、就業時間、休憩時間、派遣労働者が従事する業務内容など多岐にわたります。就業日外や就業時間外の労働についても事前に協定するのが基本です。

たとえば「就業日以外の就労は1箇月に2日の範囲で命じることができるものとする」「時間外労働は就業時間外の労働は1日4時間、1箇月45時間、1年360時間の範囲で命じることができるものとする」といった規則を労働者派遣契約や就業条件明示書に明記します。

ここで注意すべき点は、労働者派遣契約書は人材派遣会社が自社に登録した派遣スタッフを飲食店に労働者として派遣することを約束する証書だということ。飲食店と派遣スタッフとの雇用契約を意味するものではありません。

派遣スタッフは派遣先の飲食店ではなく人材派遣会社と雇用契約を締結しています。飲食店が直接雇用しているわけではありません。したがって飲食店が派遣スタッフの労働時間や雇用期間などを勝手に変更することは労働者派遣契約の違反行為に該当します。

たとえ労働時間や期間の変更が労働者派遣契約の規定範囲だとしても雇用契約に関わる変更は基本的にできません。また職務内容も労働者派遣契約書に明記していますので、たとえ派遣スタッフの手が空いていたとしても規定外の業務に従事させるのは違反行為です。

育成コストはゼロではない

飲食業界に特化した人材派遣会社はカフェやビアホール、居酒屋などの接客サービスから、キッチン業務などさまざまな飲食店業務の経験者を登録スタッフとして確保しています。派遣会社によっては未経験者でも研修で即戦力化する育成システムを整えています。

それでも飲食店側の育成コストがゼロになるわけではありません。どんなに経験豊かな派遣スタッフでも、ほとんどは他店に業務した経験です。飲食店の業務形態は店ごとに異なりますので、最初のうちは店独自の業務形態に合わせた指導と育成が必要です。

前述したように飲食店は派遣会社との労働者派遣契約によって業務の指揮命令は派遣先(飲食店)の担当者が行うものと規定されています。派遣スタッフの指導はもちろん業務量の調整や労働管理や健康管理なども派遣先が責任をもって遂行しなければなりません。

また派遣スタッフは有期雇用契約ですから、雇用期間満了と同時に退職するのが原則です。もちろん派遣契約の更新も可能ですが、更新しないケースも考慮して、新人スタッフの育成指導を迅速かつ効率的に行うことができるシステムを構築する必要があります。

まとめ

新型コロナウイルス感染症拡大や、ロシア軍によるウクライナ侵攻などによる影響の広がりが見通せない中で、新規開業や通常営業の再開に乗り出す飲食店が増える一方、先行きの不透明感から営業を再開した後も人材雇用をためらう飲食店も少なくありません。

これまで求人をパートやアルバイトに頼っていた飲食店が、アフターコロナに向けた事業戦略として人材派遣に切り替えているのも、そんな状況だからこそ。必要な人員を必要な時に効率よく確保できる新たな雇用形態として人材派遣が大きな注目を集めています。

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