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喫煙可能店とは 改正健康増進法の解説と店内喫煙の条件

シェアダイン編集部
作成日:2022/03/31
更新日:2023/01/23

目次

2020年4月から改正健康増進法が全面施行となり、複数の人が利用する屋内空間は原則禁煙となりました。飲食店も同様ですが、既存の小規模店に限り経過措置として喫煙可能室の設置が認められています。

そこでこの記事では改正健康増進法の施行後も店内で喫煙と飲食ができる喫煙可能店に着目。改正健康増進法の内容をはじめ喫煙可能店の条件と申請方法、申請が通らなかった場合の代替施策についてくわしく解説いたします。

改正健康増進法とは

改正健康増進法とは、国民の健康増進を推進するために制定された法律のこと。日本国民が健康な生活習慣の重要性を理解して自らの健康増進につとめること、国や地方自治体が国民の健康増進のための啓蒙や事業を推進することなどを義務づけています。

2003年に施行された改正前の健康増進法では、国民の健康増進を総合的に推進するための基本方針として、望まない受動喫煙を防止するために必要な対策を求める条文が盛り込まれました。

たばこによる健康被害は喫煙者だけでなく周囲の非喫煙者にも及びます。これが受動喫煙と呼ばれる現象です。厚生労働省の発表によると、受動喫煙の影響による死亡者数は肺がん約2,500人、脳卒中約8,000人など年間で約15,000人と推定されています。

また妊婦や乳児では乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因のひとつと考えられるなど健康への悪影響は深刻です。しかしながら世界保健機関(WHO)が評価するたばこの健康被害対策の国別評価で日本は先進国の中で最低ランクと判定されました。

2020年の開催が決まった東京オリンピック・パラリンピックでも国際オリンピック委員会から「たばこのない五輪」という理念が提唱されるなど、たばこの健康被害対策の強化は国家的な急務とされました。

改正前の健康増進法では多人数が利用する施設の管理者に受動喫煙防止の努力義務を課しましたが、法的強制力も罰則もありませんでした。そこで受動喫煙対策をより積極的に推進するために2018年の改正によって違反者に対する罰則が定められました。

この改正健康増進法は2019年(令和元年)7月から一部が施行され、学校や病院などの屋内空間と行政機関の敷地内などが原則禁煙に。翌2020年4月からは全面施行となり、2名以上が利用する店舗や施設の屋内空間は原則禁煙となりました。

飲食店で喫煙できるための条件とは

前述したように改正健康増進法の全面施行によって飲食店でも屋内は原則禁煙となりましたが、所定の基準を満たす店舗については、以下に示す喫煙可能空間の設置が認められています。

喫煙専用室

店舗内の一部に設置可能な喫煙室です。ここでは喫煙以外の飲食等はできません。また20歳未満の者は従業員を含めて入室禁止です。喫煙者の客はトイレに行くような感覚で一服するためだけに利用します。

喫煙専用室の規定には以下に示す3っの技術的基準が示されています。

  1. 喫煙室の煙やにおいが非喫煙空間に流出しないように、喫煙専用室の出入口で室外から室内に向かう気流を毎秒0.2m以上確保すること。
  2. たばこの煙が屋外に漏出しないように壁や天井等で区画すること。
  3. たばこの煙が直接屋外に排出されていること。


指定たばこ(加熱式たばこ)専用喫煙室

店舗内の一部に設置可能な指定たばこ専用の喫煙室です。喫煙できるのは指定たばこだけ。室内では喫煙と飲食が許可されているため、飲食店として食事の提供が可能です。

喫煙可能室

既存の小規模な飲食店(既存特定飲食提供施設)に対する経過措置として、店舗内の全部または一部に設置可能な喫煙室です。ここでは喫煙と飲食等が可能。飲食店として食事の提供も可能です。

喫煙可能室を設置できる「既存特定飲食提供施設」とは、以下の条件をすべて満たす飲食店をいいます。

  1. 2020年4月1日以前から営業していた既存の飲食店であること。
  2. 資本金または出資金の総額が5,000万円以下の小規模店であること。
  3. 客席の床面積が100平方メートル以下であること。


なお東京都の条例では、さらに「従業員を雇用していないこと」という独自規定を加えています。この場合の従業員とは、労働基準法第9条に規定する正社員やパートタイムなどの労働者です。同居の親族のみを雇用する場合や家事使用人を除きます。

また喫煙可能室にも、先に述べた喫煙専用室と同じ技術的基準が適用されます。ただし店内全てを喫煙可能空間とする喫煙可能店については、壁や天井等によって店舗外の禁煙区域に煙やにおいが流出しなければ、基準1と3は必須ではありません。

既存特定飲食提供施設と認められる店舗が改正健康増進法にもとづく喫煙可能店の認可を受けるには、次に解説するように保健所への届出が必要です。

喫煙可能店の申請方法

前述した「既存特定飲食提供施設」に該当する飲食店は、所在地を管轄する保健所に所定の届出書を提出することで、喫煙可能室を設置するか、または店舗全体を喫煙可能とする喫煙可能店として店内での喫煙と飲食等が可能になります。

喫煙可能店の届出書は保健所の窓口で受け取るか、保健所のホームページからダウンロードするなどの方法で入手できます。届出書の提出方法は郵送が基本。ファックスや電子メールによる申請には対応しません。

自治体によっては届出書の写しを返送するための返信用封筒の同封も必要です。また届出書を保健所の窓口に直接提出できる自治体もあります。くわしくは地元の保健所にお問い合わせ下さい。

喫煙可能店の申請が通らなかったときの代替施策とは

飲食店で喫煙可能店の申請が通らない場合は店内に喫煙専用室を設置するか、逆に全面禁煙店にする以外に営業を継続する方法はありません。ただし業種転換が可能ならバーやスナックなどの喫煙目的施設に転換するという代替施策もあります。

「喫煙目的施設」とは、喫煙をサービスの目的として認可された施設のこと。バーやスナック、たばこ販売店などが該当します。

改正健康増進法に示された喫煙目的施設の条件は以下の通りです。

  1. 喫煙場所の提供が事業の主な目的のひとつであること。
  2. 飲食を提供する設備があること。
  3. 出張販売を含むたばこの対面販売を行っていること。
  4. 主食としての食事をおもに提供しないこと。


3.の「対面販売」とは、たばこ事業法が定める小売販売業の許可を得た者が購入者と対面してたばこを販売すること。自動販売機は該当しない、ということです。

4.の「主食」とは、一般に主食と認められる食事のこと。食パンや米飯、麺類、ピザなどが該当します。

ただし市販の冷凍食品を解凍して提供する場合やデリバリーサービスを利用して調達した食事は主食の定義に含まれません。

喫煙目的施設では、喫煙可能室と同じ3つの技術的基準に適合した店内の一部または全部を喫煙目的室とすることで、喫煙しながらの飲食等が可能になります。

まとめ

2020年4月に全面施行された改正健康増進法によって複数の人が利用する屋内空間は原則禁煙となりました。飲食店も同様ですが、既存の小規模店に限り経過措置として喫煙可能室の設置が認められています。

店内全てを喫煙可能室とする喫煙可能店として営業許可を得るには、既存の小規模飲食店に該当することと、店舗建物が受動喫煙防止の要件を満たしていることが必要です。そのうえで地元保健所に届出書を郵送して申請します。

喫煙可能店の申請が通らなかった場合は、喫煙目的施設として営業可能なバーやスナックに業種転換するという代替施策もあります。

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