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飲食店に関係のある労働基準法について解説 従業員の管理で必要な人材活用術とは

シェアダイン編集部
作成日:2022/04/11
更新日:2023/01/12

目次

 飲食店を営業される事業主様にとって、ご自身の店舗を支えてくれるスタッフは今後も共に協力し営業を助けてくれる大きな助けになっている事と思います。
事業主様にとってスタッフは大きな力になります。ですがどれだけの時間働いて貰えるのか、手当はどの程度渡せば良いのか多くの規定があります。規定で定められている枠の中で、気持ちよく働いて貰い、長い期間よい関係で働いて貰いたいものです。

この記事の中では具体的に、労働基準法の中での労働時間の具体的な規制や、規定の時間以上に働いて貰う場合、支払うべき手当など、雇用主として把握しておく必要のある規定を解説していきたいと思います。

労働時間について

法律では労働時間について以下のように定められております。

  • 原則として1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
  • 労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を当てないといけません
  • 少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。

と労働時間と休憩時間、休日の回数など具体的に労働基準法のなかで定められております。
ですが時間外労働・休日労働協定を締結し、労働基準監督署長に届け出ることで、法定時間を超える時間外労働、休日労働を労働基準法36条で認めております。

認められてはいるのですが、36条は無制限に労働時間の増加を認めるモノではなく、必要最小下にとどめられるべきものであるという事を十分に雇用者と雇用される側が意識する必要があります。

また時間外労働には割増賃金の支払いが必要となります。時間外労働の割増賃金の割増率は2割5分以上。一月あたり60時間を超える場合は5割以上。休日労働には3割5分以上の割増賃金の支払いが必要になります。

この労働時間の管理は1つの事業所内での労働時間ではなく、従業員の労働時間を示したものになります。
では1人の従業員が異なる2つの職場で働いた場合、割増料賃金はどのタイミングで発生するのか、どちらの職場に割増賃金を支払う義務を生じるのか。
労働基準法38条の中に「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用においては通算する」と定められています。
ですので、1つの事業場では労働基準に定められた労働時間を超えていなくても、他の事業場で超えてしまった場合、労働時間超過、そして時間外労働の割増賃金を支払う義務が生じます。
この場合、割増賃金の支払い義務が生じるのは、行政解釈では「法廷時間外に使用した事業主」にありますので、例えば、A店で6時間働いた後B店で3時間働いた場合、法定時間を超えて働かせたのはB店でありB店に1時間分の時間外労働分の割増賃金を支払う義務が生じます。

この解釈ですと、実際の労働時間は関係なく1日のうち後の時間に雇用した事業者に支払い義務が生じるやや不合理に感じる内容になっています。
また1日単位ではどちらか1店舗でしか働いていなくても同一週に複数店舗で働いており一週間の法定労働時間40時間を超えた場合も、同様の考え方で割増賃金が必要になります。

変形労働制とは

1日、1週間の中で働ける時間に制限を設けると、長期の休みがある業界や、繁盛記と閑散期のある業界では月や週ごとに労働時間にばらつきが生じてしまします。こういった問題を解決するのが変形労働時間制となります。

変形労働制とは1ヶ月以内の一定期間を平均し、1週間あたりの労働時間を超えない範囲内において、特定の日、もしくは週に法定労働時間を超えて労働させることが出来る制度のことを言います。

労働基準法によって労働時間は「原則1日1時間、1週間で40時間」と規定されておりますが、変形労働時間制を導入していれば、法定労働時間を月単位・年単位で調整できるため、繁忙期において勤務時間が1日8時間以上になってしまっても、時間外労働扱いにならないという利点があります。


変形労働時間制のメリット


残業代の削減に繋がる
閑散期の労働時間を法定労働時間より短くする代わりに繁忙期の労働時間を法定労働時間より長くするという調整が可能となります。
人員リソースの最適化
閑散期と繁忙期に最適な時間で社員に働いて貰うことが出来るため、人員リソースの最適が可能になります。必要な労働力を調整することで効率的に仕事を進められるようになります。


変形労働時間制のデメリット

管理作業の発生
日や週によって異なる所定労働時間を持つため、勤怠管理が非常に複雑になり、管理者にとって繁雑な作業が増えることになります。

変形労働時間制の届け出

一定の条件を満たした上で労働基準監督署への届け出が必要になります。
現状把握
変形労働制を導入するに当たり、まずは勤務実態の把握を行いましょう。繁忙期がいつで閑散期がいつなのかを具体的に把握できなければ制度を効果的に使用できません。
労使協定の締結
週単位、年単位の変形労働時間制を導入する場合「労使協定」を締結する必要があります。労使協定とは雇用主と労働者との間で締結される締結される、「書面による」協定のことをいいます。
一ヶ月単位での変形労働時間制の場合は「労使協定」か「就業規則」または「就業規則に準じたもの」に以下の5つの項目を定める必要があります。

  • 対象労働者の範囲
  • 対象期間と起算日
  • 特定期間
  • 労働日と労働日ごとの労働時間
  • 労使協定の有効期間

労働基準監督署へ届け出

労使協定を締結したら、「労働基準監督署」に届け出をおこないましょう。届け出には厚生労働省が指定した「1年単位の変形労働時間制に関する協定届様式第4号」が必要になります。厚生労働省のホームページからダウンロードが可能です。
 

 深夜勤務の手当

残業の種類として上記に書かせて頂いた、時間外手当と休日出勤手当の他に深夜手当があります。深夜勤務手当の条件と手当の内容を書かせて頂きます。

深夜手当とは

夜10時から翌朝5時までの間に労働をした場合に支給される手当のことで、給料に2割5分割り増しする手当になります。
深夜に所定労働時間を超えて働く際は深夜手当の2割5分割り増しの賃金にさらに2割5分上乗せして計算することが義務つけられています。その為、深夜に時間外労働が発生すると5割の上乗せをした給料が発生してしまいます。

未成年の労働時間は何時まで?

未成年を雇用する場合、雇用できる最低年齢、労働時間、就労できない業務などの規定があるため注意が必要です。
その中でも時間的制約に関しては以下の2つになります。

  • 原則として時間外労働や休日出勤をさせることは出来ません。未成年者の健康や成長を保護するためです。
  • 午後10時から翌日5時までの深夜時間帯に労働させることは出来ません。

扶養控除の制限

最後に、話題から少しそれてしまいますが扶養控除について。
扶養控除とは納税義務のある者に所得税上の控除対象となる扶養家族が居る場合、扶養家族の人数に応じて一定の金額の所得控除がうけられる税制上の仕組みのことです。
この制度によって納税者本人の納税負担が軽減されます。ここでは簡単にこの扶養家族の条件に当てはまる年収ラインを紹介します。

  • 130万円を超えると社会保険の不要から外れます。
  • 150万円を超えると配偶者特別控除が徐々に減額されていきます。
  • 201万を超えると配偶者特別控除が受けられる上限の金額となります。

扶養控除の制限によりこの年収ラインを意識して収入のコントロールを意識する人が居るため労働時間のコントロールが求められる場合があります。

まとめ

店舗運営に関して切っても切れない人材雇用に関して、定められた労働基準法。この規定に沿って雇用形態を定めていくことで、雇用主と労働者との無用なトラブルを避けることが出来ます。雇用主と労働者との間に確かな信頼感を作り、長期間、お互いが気持ちよく働いて貰うために条件や既定を改めて見直し、より効率的な勤務態勢、制度をを検討し続けることが必要になってくると考えます。
 
参考:厚生労働省HP

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