東京レストランツファクトリー様 ~スポットシェフ導入事例~
シェアダイン編集部
毎年連日のように「命に関わる危険な暑さ」「災害級猛暑」と報道され熱中症による救急搬送や死亡事故も相次いでいます。特に飲食店の厨房では洗い場、下ごしらえなどで水が必要で湿度も高くなり、調理をする際は火を扱うことから高温になりやすく熱中症になりやすい条件が高まりますので排気環境を整えたり従業員が安全に業務を行うことが出来る環境づくりは大切なものとなるでしょう。
高機能の空調設備を導入する方法もありますが、コストがかかるうえに施行の為に休業しなければなりませんので気軽にできる方法ではありません。
そのためコックコートやインナーを工夫したりスポットクーラーを導入したりする方法を取り入れている店舗もあります。さまざまな工夫をし店舗に一番合った熱中症対策を行うことが従業員の安全と快適な職場環境を作ることに繋がるでしょう。
この記事では厨房での熱中症対策でやるべきことから熱中症の労災認定基準、業務中の熱中症トラブルが発生した場合企業が問われる過失などをまとめてあります。
飲食店のなかでも厨房は特に熱中症になりやすい環境です。厨房は皿を洗ったり調理に水を使用しますので湿度が高くなりやすくコンロやオーブンも使用しますので高温になります。このような高温多湿の環境は熱中症になりやすく大変危険です。
また、ピーク時には忙しさから従業員の休憩や水分補給もなかなかとりにくく体調管理も疎かになってしまうことも熱中症になる理由の一つです。そのため、特にこれから夏の季節は厨房の暑さ対策、熱中症対策が必要不可欠となります。
高温多湿で輻射熱があり風がほとんどない環境の為熱中症を起こしやすいとされている厨房ですがさまざまな対策をとることにより防ぐことが出来ます。
方法として高機能の空調設備を導入することで熱中症を防ぐことができますが、コストがかかるうえに施行の間休業しなければなりませんので気軽にできる方法ではありません。
ここでは熱中症対策として特に効果的ですぐにできる方法をいくつかあげていますのでぜひ参考にしてください。
排気環境を整えることで空気の循環をよくし熱中症を防ぐこともできます。「厨房排気ダクト」と呼ばれる調理時の油や煙、水蒸気などによって汚染された空気を排出するために使われる鉄やステンレスできた管を厨房に合った適切な位置に設置することで効率的な空気の循環がうまれ快適な室温を保つことができるのです。しかしダクトの清掃が不十分だと本来空気を循環させるはずが十分に機能せず室内の温度を上げてしまします。そのためグリスフィルターとよばれる排気設備の入り口を月に一度くらいの頻度で掃除をすると良いでしょう。
コックコートやインナーを工夫することも熱中症対策として効果的です。コックコートは調理の際の安全対策として耐熱性が高く火に強い生地で作られているものがほとんどですが、耐熱性の高い生地はどうしても衣類の中にも熱がこもりやすくなってしまいます。高温多湿な厨房で着用するには熱中症対策という観点からはあまりおすすめできる服とは言えませんが火や熱に対する安全性には変えられません。そのため安全性はあるが通気性の良く熱のこもりにくいコックコートは熱中症対策の効果的な方法の一つといえます。近年では気化熱で体を冷やす空調服コックコートというものがあります。空調服コックコートは背面腰のあたりに電動ファンが付いたコックコートです。作業現場や野外作業時の熱中症対策として効果を発揮している空調服ですが、同じく熱中症になりやすい環境である厨房向けとして新たに開発されました。
また、インナーを見直すのも熱中症対策のひとつです。手持ちのコックコートに夏に適した素材のものがなかったりすぐに買い替えることが難しい場合は「綿」素材のインナーやメッシュ素材、接触冷感・防臭加工を施した機能性肌着も多く出回っていますので、なるべく涼しいインナーを身に着けることで体感温度も下がり高温になりやすい厨房でも快適に業務を行うことができます。
高温多湿となる厨房では業務用のエアコンは必須ですが、なかには店内の構造上エアコンを取り付けることが難しいこともあります。スポットクーラーは工事不要で移動も可能な為必要な時に必要な場所で使える便利な空調機器です。仕組みはエアコンとほぼ同じでその場の空気を取り込んで中で冷やしてから涼しい風を送ってくれます。クーラーなみに涼しい扇風機ののようなものですが、簡易であってもエアコンということは排熱する必要があり、背面からは熱風がでるので室温が上がりやすいデメリットがあります。そのため排熱する管を窓から外に出し熱を外に逃がすなどの工夫が必要です。
労働基準法施行規則別表第1の2第2号8で「暑熱な場所における業務による熱中症」は業務上の疾病と規定されており、仕事中に熱中症になってしまった場合、労災の対象となる可能性があります。
仕事中に起こった熱中症が労災として認定される基準は「業務を行う環境が暑かったり身体的負荷が高かったりしたことから、熱中症になる危険が高かった」「高温の屋外で休憩時間もなく忙しい業務が続いた」など、熱中症になったことと仕事環境や業務負荷との因果関係が認められることです。
屋内であっても厨房などの高温多湿の環境は従業員が熱中症を起こしやすく労災の対象として認定されやすいといえます。
業務中に従業員が熱中症になってしまった場合職場環境は最適であったか、対策は十分にされていたかなどの過失が問われる可能性があります。
具体的には仕事をしている時間・場所に熱中症を引き起こす明確な原因が存在していること、その原因により熱中症に至ったという因果関係があること、仕事に関係しない他の原因により発症したものではないことが認められれば労災として認定されるため、例えば厨房ではエアコンの取り付けやコックコートの工夫など熱中症に対する対策を行い従業員が熱中症にならないように配慮することが大切です。
安全配慮義務とは、従業員が安全で健康に働けるよう必要な配慮をする義務を企業に課すことを指しており労働契約法の第5条に定められています。
<労働契約法 第5条(労働者の安全への配慮) 条文>
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
・引用元:労働契約法
安全配慮義務違反となる視点は 危険な事態や被害の可能性を事前に予見できたかどうか、予見できた損害を回避できたかどうかです。企業が安全配慮義務を怠ったことで従業員に損害が生じてしまった場合安全配慮義務違反となり、損害賠償が発生している判例もあります。
業務中の熱中症は屋外で作業する仕事だけで起こるものではありません。とくに飲食店の厨房は夏は気温35℃以上になることもあります。従業員の安全はもちろんですが食材を20℃~40℃の温度帯に長時間放置すると雑菌の繁殖が活発化するためO157やO111などの食中毒が発生する可能性もあり大変危険です。
そのため厨房はできるだけ湿度80%以下温度は25℃以下に保つのが望ましいとされています。
大がかりな高機能の空調設備を設置することも熱中症対策になりますが、コストがかかるうえに設置する間は休業しなければならないデメリットも生じるため気軽に設置することはできません。しかし工事不要なスポットクーラーを使用したり通気性の良いコックコートを使用するなどちょっとした工夫でも熱中症を防ぐことができます。
このような対策を十分に行っていないことで企業は安全配慮義務違反となり過失を問われる可能性があるので日常からさまざまな対策を行うことが大切です。
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