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ゴーストレストランとは 一般的な飲食店との違いと開業をするには

シェアダイン編集部
作成日:2022/03/16
更新日:2023/01/26

目次

新型コロナウイルスの感染拡大によって苦境に立たされる飲食業界。その中で注目を集めているのが「ゴーストレストラン」です。コロナ禍でも営業を継続できる新たなビジネスモデルとして今後も増加が予想される一方、デメリットも浮かび上がっています。
 
そこでこの記事ではゴーストレストランの開業に必要な知識や資格、メリットやデメリットについてくわしく解説いたします。
 

ゴーストレストランとはなにか

「ゴーストレストラン」とは客席がない飲食店のことです。「ゴースト(ghost)」は英語で「幽霊」や「幻」を意味します。ゴーストレストランは接客も対面販売も行わず、必要最小限の調理場を確保して料理を作製。配達はデリバリーサービスで行う極小形態の飲食店です。
 
日本ではテイクアウト可能な店舗を含める場合もありますが、ゴーストレストランの本場アメリカではイートインもテイクアウトもなく、注文や配達、代金決済はデリバリーサービスのシステムを利用して調理のみを行う飲食店のことをゴーストレストランと呼んでいます。
 
アメリカでは実店舗を持たずシェアキッチンで調理するミニマルな店舗形態が一般的。そこが「ゴースト」と呼ばれる由来です。近年では一般の店内飲食型レストランもゴーストキッチンに料理を依頼するという飲食事業の分業化的な運営スタイルも普及しています。
 

一般的な飲食店との違い

ゴーストレストランと一般的な飲食店との違いは接客システムの有無にあります。ゴーストレストランは料理を直接客に提供することはありません。店内には客席やイートインスペースはもちろん会計設備もありません。必要最小限の調理場のみで事業展開を行うのが特徴です。
 

ゴーストレストランを開業する際に必要な資格

ゴーストレストランを開業するためには保健所の営業許可が必要です。許可申請の手続きは通常の飲食店と変わりません。保健所は申請者の調理施設が所定の要件を満たすかどうかを審査します。次に食品衛生責任者を1人以上配置しなければなりません。
 
食品衛生責任者とは、食品の製造加工や調理、販売などの業務を衛生的に行うように指導管理する人のこと。飲食店の開業に不可欠な資格です。ちなみに飲食業には調理師免許が必要と思われがちですが、飲食店の調理業務は調理師でなくても従事できます。
 
飲食店の開業にあたって必要な資格は食品衛生責任者のほうです。調理師免許は不可欠ではありませんが、食品衛生責任者としての資格も取得しているため、調理師がいれば他に食品衛生責任者を別途配置する必要がないという利点はあります。
 
飲食店を新規で開業する場合は食品衛生責任者がいなくても営業許可申請は可能。その場合、許可後3ヶ月以内に食品衛生責任者を配置しなければなりません。一般の人が食品衛生責任者の資格を得るには地元自治体が指定する講習会を受講する必要があります。
 
受講料は1万円前後。講習内容は食品衛生学、食品衛生法、公衆衛生学で、講習は1日で終了するのが一般的です。最後に修了試験を受けて合格すれば食品衛生責任者の資格を取得できます。
 
調理施設の検査については業種や地域によって対象の要件が異なります。くわしくは保健所にお問い合わせください。
 

ゴーストレストランのメリット

日本でもゴーストレストランが開業ブームとなっているのは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で飲食店経営が困難になった、というだけが理由ではありません。レストランの開業や経営に必要なコストを大幅に削減できるメリットがあるからです。

坪数を抑えられる(家賃削減)

ゴーストレストランには客席がありません。客用の玄関やトイレ、会計用のカウンターも不要。そのため店舗の坪数を大幅に抑えられるメリットがあります。立地条件もそれほど考慮する必要がないため、広さや場所にこだわらず家賃の安い物件を選択できます。
 

ホールスタッフがいらない(人件費削減)

飲食業は粗利益率が高い反面、人件費の負担が大きいといわれる業種です。ゴーストレストランは接客担当のホールスタッフが不要。調理スタッフのみで運用できるため人件費の大幅削減が可能です。
 

初期費用が少なくてすむ

ゴーストレストランは家賃や人件費だけでなく、開業時の初期費用も少なくてすみます。たとえば客用の椅子やテーブル、食器、レジといった什器備品類の購入や内外装工事、看板の設置などが一切不要。シェアキッチンを利用すればさらに低コストで開業できます。
 

ゴーストレストランが敬遠される理由とデメリット

ゴーストレストランは飲食店の開業をめざす人にとってコスト面でメリットが多いビジネスモデルです。一方で、接客機会がないため信頼性に疑問を持たれたり、顧客に体験価値を提供できないといった問題点も指摘されています。
 

1店舗で複数の専門店を名乗ることができるが信頼性に疑問

ゴーストレストランでは料理の注文と配達をデリバリー代行サービスに委託しています。たとえばUber Eatsを利用する場合、専用アプリで登録店のメニューを閲覧して好きな料理を注文します。その際に人気を集めるキーワードが「専門店」という名称です。
 
そこで多くの注文を得るために同じ店舗でありながらカレーやラーメン、寿司などの人気ジャンルに「専門店」として複数登録する事例も。メニューの数を売り物にするのは実店舗でもよくあることですが、ゴーストレストランは客が来店しないため偽装が容易です。
 
このように同じ調理人が複数の専門店を名乗って提供している料理には質の高さは望めません。ゴーストレストランは低コストで新規参入も容易ですが、こうしたシステムによって業界全体の信頼性に疑問が生じる一面もあることには注意が必要です。
 

接客がないため体験価値がなくなる

良いレストランで味わえるのはおいしい料理だけではありません。家庭には求められない特別な空間と落ち着きのある雰囲気、細やかなおもてなしのサービスなど、接客型レストランならではの体験価値を提供しています。
 
たとえばフレンチやイタリアンの高級レストランは「今宵こそは!」という勝負デートや結婚記念日など特別な日に利用されることも。また庶民的でコスパが高い居酒屋などは気心の知れた同僚や友人たちと飲食を楽しむのに最適な場として利用されています。
 
飲食店の利益率を上げるためには常連となるリピーター客の獲得と客単価の向上が不可欠です。客に特別な体験価値を提供することはリピーターや常連の育成につながるだけでなく、1人1人の客に適切なサービスを提供して客単価を高めることにもつながります。
 
一方、ゴーストレストランの仕事は注文された料理を作るだけ。客に体験価値を提供する接客機会がありません。しかもデリバリーサービスのユーザーは専用アプリで料金が安い店を選ぶ傾向が強く、客単価を増やすために値上げすると客を失うというジレンマがあります。
 
また料理が良くても配達員の対応が悪いと客から低評価を受けるという店側にしてみれば理不尽なケースも。ゴーストレストランは接客しないため料理に注力できるメリットはありますが、利益が伸びにくいうえに仕事のやりがいも感じにくい、という声も聞かれます。
 

まとめ

長引くコロナ禍の影響に苦しむ飲食業界で注目を集めるゴーストレストラン。実店舗がなくても運営できるため初期費用や経費を安く抑えられるのが魅力です。デメリットはないとはいえませんが、飲食店経営をめざすなら考慮に値するビジネスモデルといえます。

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