Hero Image

飲食店の光熱費がかかる原因と光熱費を抑えるポイントとは

シェアダイン編集部
作成日:2022/03/31
更新日:2023/01/23

目次

 新型コロナウイルス感染症の長期化により厳しい経営環境が続く飲食業界。2022年にはロシア軍のウクライナ侵攻により原油や原材料価格が高騰するなど、経営への悪影響も懸念されています。

すでに店舗を運営中の方もこれから開業する方も、飲食業をめぐる現状をふまえた計画の見直しが必要です。そこでこの記事では昨今のエネルギー価格急騰の影響が特に大きい光熱費に注目。電気料金を中心に光熱費を抑えるポイントについても解説いたします。

飲食店の光熱費は経費のうちの何%?

一般的な飲食店の光熱費は経費全体の10%前後とされています。売上に占める比率は5~7%ほど。業種別に見ると、比較的光熱費が多いラーメン店では経費全体に占める比率は10~12%ほど。居酒屋は7%程度とされています。

具体例として月々の売上が200万円、純利益30万円のラーメン店では、毎月の光熱費は18万円前後となります。ちなみに光熱費は会計上、水道料金を含める場合が多く、勘定科目は「水道光熱費」とするのが一般的です。

飲食店の経費の割合

飲食店のおもな経費としては以下の勘定科目があげられます。

  • 地代家賃:店舗や事務所が賃貸の場合に要する賃借料など。
  • 仕入:食材や酒類の原価。
  • 人件費:従業員の給与および賞与、社会保険料、退職金、福利厚生費など。
  • 減価償却費:業務用什器備品や内装設備など減価償却資産の償却費。
  • 水道光熱費:電気、ガス、水道、灯油などの使用料および購入費。
  • 租税公課:収入印紙、固定資産税、事業税、法人税など。
  • 通信費:インターネット接続料、事業で使用する固定電話や携帯電話料金、切手など。
  • 旅費交通費:従業員の通勤費や出張旅費、駐車料金など。
  • 広告宣伝費:雑誌等の広告掲載費やチラシの作成・配布費用など。
  • 消耗品費:割箸や紙ナプキン、トイレットペーパーなどの購入費用。
  • 支払利息:借入金に対して支払う利息。


これらの経費で最も大きな比重を占めるのは仕入(食材原価)と人件費です。そこで仕入と人件費の総額を「食材(Food)」と「人件費(Labor)」の頭文字を取って「FL(F/L)コスト」といいます。

飲食店の売上に占めるFLコストの比率(FL比率)は売上の50~60%前後。経費全体に占める比率では60~70%前後になります。FLコスト以外では、地代家賃が10~12%前後。光熱費と減価償却費がそれぞれ10%前後です。

事業運営における必要経費は固定費と変動費の2種類に分類できます。固定費とは、売上額の変動と無関係に発生する経費のこと。具体的には地代家賃や減価償却費、借入金、広告宣伝費、通信費、保険料などがあります。

固定費は売上がなくても発生する費用です。逆に売上や利益が倍増しても固定費はほとんど変動しません。

次に変動費は文字通り売上によって金額が変動する経費のこと。仕入や消耗品費、水道光熱費などがあげられます。ただし固定費と変動費の区分は場合によっては判断が難しいこともあります。

たとえば人件費の場合、正社員として雇用した従業員の給与は固定費に計上できますが、パートやアルバイト従業員は売上によって人数が増減するため変動費とみなすのが一般的です。

光熱費を抑えるポイント

飲食店の水道光熱費の約80%が電気料金と言われています。そこでこの項では光熱費の削減に効果的な電気料金の節約ポイントをまとめてみました。

使っていない場所の照明をこまめに消す

不要な照明をこまめに消すのは省エネの基本です。トイレや厨房、従業員スペースなど、使っていない部屋をこまめに巡回して照明がともっていれば電源を切って節電しましょう。もちろん空調機器やテレビなど他の電気機器についても同様です。

白熱電球や蛍光灯をLED照明に変える

白熱電球は意外なほど電気を消費します。発熱量も多く夏場は冷房費の上昇にもつながります。LED照明の消費電力は白熱電球の20%、蛍光灯の70%と言われています。発光に熱を伴わないこともLED照明の大きなメリットのひとつです。

LED照明の欠点は電球などの光源装置が高価なこと。それでも耐用年数が長いので、一度取り替えれば光熱費だけでなく長期的には消耗品費の節約にもなりますが、店内の照明を一度に全て交換すると、それなりに費用がかさみます。

LED照明の導入は支出に見合う節約効果があるかどうかが目安。一度に交換するのではなく部分交換を前提に支出額と電気料金の削減額を比較して、課題の解決に最も効果的な支出額を割り出しましょう。

エアコンや換気扇などのメンテナンスを定期的に行う

飲食店のエアコンは稼働時間が長く利用環境も過酷です。メンテナンスを怠ると電気料金の上昇や故障につながります。また排気ダクトや換気扇が汚れると火災の原因になることも。定期的なメンテナンスは省エネだけでなく事故や故障を予防する効果もあります。

電気料金プランを見直す

2016年に電気小売業への参入が自由化され、「特定規模電気事業者(新電力)」という新たな小売電気事業者が誕生。消費者は新電力各社の電気料金を比較してコスパが高い電力会社に切り替えができるようになりました。

新電力は日本卸電力取引所(JEPX)を通じて電力を購入し消費者に販売する仕組みです。東京電力などの大手電力会社は発電した電気の一部をJEPXに供給しています。つまり新電力が販売する電力の多くは大手電力会社が提供するため安定供給が可能です。

飲食店経営で電気料金が高いと感じたら電力会社や料金プランを見直すことで光熱費が削減できる可能性も。たとえばauでんきの「でんきLプラン」や楽天エナジーの「プランM」など飲食店におすすめの料金プランも提供されています。

新電力のデメリットは電気料金が卸電力市場の価格変動に影響されやすいこと。電力が余る季節には料金も低下しますが、猛暑の夏や厳冬期に発電所のトラブルが重なったり、原油や天然ガスなどの価格が高騰したりすると電気料金が跳ね上がることもあります。

電気料金プランを見直す際は直近の料金だけでなく長期的な変動も考慮して選択しましょう。

電気代ガス代を安く抑える電力自由化とは

2016年の電気小売業自由化に続いて、2017年からガスの小売も自由化されました。しかしながら電力に比べるとガス事業は保安管理がきびしく、ガス導管網などのインフラ整備も遅れているため、異業種からの参入は電力市場ほど多くありません。

現在のところ電力・石油などのエネルギー大手の域外進出を中心にガス事業への新規参入が進展。電気とガスの同時契約でセット割がつく新たな料金プランを設定するなど、首都圏や近畿の大都市圏を中心にガス大手と電力大手が熾烈な販売競争をくり広げています。

既存のガス小売業者も対抗してガスだけで割引になるプランを新設。場合によっては電気とガスを個別に契約したほうが安くなるようなケースもあります。

電力とガスの小売り事業者や料金プランは地域によって異なります。くわしくは最寄りの電力またはガス事業者にお問い合わせ下さい。

まとめ

飲食店の光熱費は経費全体の10%前後とされています。飲食事業で安定的な利益を確保するためには無駄な経費の削減は必須。使っていない部屋の照明をこまめに消したり、電球や蛍光灯などの光源装置をLEDに交換するなど省エネ対策を徹底しましょう。

また電力とガスの小売自由化によって、さまざまな会社がエネルギーの小売事業に参入しています。各社が提供する料金プランを比較して上手に選択すると光熱費削減につながります。

関連記事:
電気代がかかる!飲食店店舗での電気代がかかる要因と改善方法の解説
飲食店で利用できる助成金一覧のご紹介

この記事をシェアする